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アルジャジーラがクリエイティブ・コモンズ

個人がドキュメンタリーをつくるとき、既存の映像素材を使いたいことがあります。
しかし、簡単で安価な素材入手の手段は限られています。
放送局のように、過去のストックから自由に引き出してくることはできません。
個人の、とくに非商業的な、ドキュメンタリー映像制作で、自身以外の映像を使うのは大きな壁があります。

さて、2009年1月13日から、中東カタールのニュース放送局のアルジャジーラが、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスで、いくつかの動画を公開しはじめています。

これらの動画は、クリエイティブ・コモンズのなかでも、もっとも「ゆるい」帰属ライセンスです。つまり、アルジャジーラのクレジット表示さえしておけば、わたしたちは動画を共有したり、字幕をつけたり、リミックスしたり、再利用することができます。

現在、西側メディアが取材できていない、紛争地帯・パレスチナ自治区ガザの模様が数十本あります。アルジャジーラは、海外他局からの映像使用料を大きな収益としているらしいので、すべての動画がクリエイティブ・コモンズにはならないでしょう。しかし、自局だけがつくりだせるコンテンツを効果的にひろげる、興味深い試みだと思います。

このような流れが他の事業者にもひろがれば、個人の映像制作者にとっても福音になりますね。

アルジャジーラがクリエイティブ・コモンズ情報庫を公開 (Joi Ito’s Web)

Al Jazeera Creative Commons Repository
http://cc.aljazeera.net/

“アルジャジーラ 報道の戦争すべてを敵に回したテレビ局の果てしなき闘い” (ヒュー・マイルズ, 河野 純治)

増山たづ子という「写真家」

新宿のコニカミノルタプラザで、増山たづ子写真展「遺されたネガから」を観ました。
平日の昼間でしたが、年配の方中心にたくさんの来場者でにぎわっていました。

増山たづ子さんは、徳山ダム建設で水没する岐阜県徳山村の記録を撮りつづけたアマチュア写真家です。
写真は、村のさまざまな行事や風景、人々を撮影技巧を凝らすことなく写しています。
人々の表情は、村人でなければけっして撮ることのできない自然なものです。
徳山村の風景は特別なものではなく、誰でも自分の故郷が思い出されるような日本の田舎の風景そのものです。

彼女は、一眼レフではなく一般的なオートカメラを使いつづけました。
彼女の写真は、プロではない人による売り物ではない表現です。
その表現が大きく取り上げられるようになったのは、やはりダム建設問題の現場のドキュメンタリーであるという社会的背景が大きいはずです。
写真そのものよりも、彼女がどのようにしてデビューし、有名になったのか。つまり、プロデュースしたのは誰だったのかが気になりました。
すくなくとも朝日新聞は、今回も主催者のようですし、大きく関わっていたようですね。

会場で上映されていた名古屋テレビ(メ〜テレ)の特集映像は、いただけませんでした。
せっかくの取材が、安っぽいBGMで台無しです。会場にこの音楽が響いてしまっているので、感動の押し付けがましさが目立ってしまって残念です。
久々に安っぽい名古屋のローカル番組を思い出しました。

増山たづ子さん亡き後の関係者にインタビューした新聞連載記事のなかでも、彼女のおいの小学校の先生の言葉が印象的でした。
彼女を、戦争の被害者、ダムの被害者として描くのは簡単ですが、ただのセンチメンタリズムで語ってはいけない写真家だと思いました。
彼女がカメラを手にする前は、テープレコーダーで生活音などを録音していたといいます。
その音がどんなものだったのか聞いてみたいものです。


“増山たづ子 徳山村写真全記録” (増山 たづ子)

増山たづ子写真展
http://konicaminolta.jp/plaza/schedule/2008december/gallery_bc_081202.html

キャラクタービジネスとしてのNHK

NHK教育フェアに出かけました。お目当ては、「そうぞうライブラリー」展示ブースです。前日にNHKの方からメールでご案内いただきました。情報に感謝です。NHKも、ようやくBBC Creative Archiveのような二次創作可能なライセンスで映像を提供するようなので、これは見ておこうと思いました。しかもこども向けということは、コンテンツにも工夫があるだろうと期待していました。

NHK教育フェア
http://www.nhk.or.jp/edu-fair/

Creative Archive
http://creativearchive.bbc.co.uk/

「そうぞうライブラリー」は、ソフトウェア「そうぞうエディター」を使って、あらかじめ用意された映像素材を編集して短い作品をつくることができるものでした。「そうぞうエディター」は、さいきん話題のWindows用映像編集ソフトウェアLoiLoScopeがベースになっているとのこと。
http://loilo.tv/vpo/pressJP.html

映像素材は、自然の風景を中心にとてもきれいです。さらに、動く「どーもくん」や「おしりかじりむし」といったキャラクターを合成できます。編集のイン点・アウト点で、自動的に短時間のフェードイン・フェードアウトがかかっていて、きれいに仕上げてくれます。

しかし残念ながら、これは、こどもの創造を広げるコンテンツではありませんでした。キャラクター、背景、文字、音声というレイヤーが決められています。これを開発した大人たちは、こどもがつくる作品の枠を想定しすぎではないでしょうか。もちろん、こどもたちは、枠を超えた想定外ものをつくりのけるでしょうが、彼らにとってもちょっときゅうくつな箱庭だと思います。「キャラ」というレイヤーの存在が象徴的です。背景とキャラを合成するのは映像の楽しみのひとつだとは思いますが、それだけでは映像制作の魅力を矮小化していると思いました。

とはいえ、来年秋に公開予定で準備が進んでいるそうですので、今後に期待したいところです。

さて、となりのNHKスタジオパークも無料公開されていたので、入ってみました。

NHKスタジオパーク
http://www.nhk.or.jp/studiopark/

デジタル放送の宣伝や、番組の宣伝や、制作体験や、とにかく賑やかな展示が盛りだくさんです。教育フェアもそうでしたが、随所に説明役のお姉さんがいて、黄色い声を張り上げています。説明役にNHKのOBの方を起用してくれたほうが、だんぜん面白そうです。全体的に、とても20世紀博覧会的な展示で、タイムスリップしたようでした。自宅でテレビをやめたせいもあるのですが、まるで古いメディアとして「テレビ」の博物館を見ているような錯覚に陥りました。「そういえば、テレビってこういう華々しいメディアだったなあ…」としみじみ過去を振り返る感じです。来場者のほとんどが、小学生の団体と高齢者だったのが、いまのテレビの視聴者層を反映しているようでした。

実際の収録スタジオが、窓越しにのぞき見られるようになっているのは面白かったです。来場者がフラッシュ撮影すると、収録に支障が出るからカーテンが閉められるそうですが、すでにほとんどカーテンが閉まっていました。それでもカーテンのすき間から、大河ドラマのスタジオセット、新・日曜美術館の収録風景、ある特別番組の準備風景をのぞき見ることができました。

スタジオパークのおみやげ屋さんには、多くのキャラクターグッズが並んでいました。NHK前の広場のステージでは、キャラクターと一緒に多くのこどもたちが踊っていました。このような風景を見ると、NHKは、まるでキャラクター産業の一企業だと思わざるをえません。キャラクターを売ることは、テレビの愛好者を増やすことには寄与するでしょうが、こどもの創造性をひろげることにつながるかは疑問です。

丸善丸の内本店「第45回せかいの絵本展」

朝倉民枝さんが制作されているインタラクティブ絵本「ピッケのおうち」の新しい展開です。
ピッケの「おはなしづくりソフト」で小さな絵本作りができるワークショップが開催されます。
直前ですが、お知らせを掲載します。私は残念ながら行けないです。

ピッケが、本屋さんに初登場!
東京駅丸の内口すぐのオアゾにある丸善丸の内本店で、「せかいの絵本展」の
会期中、タッチディスプレイ版を展示します。21日(日)には、ピッケのミニ絵
本を作るワークショップもします。
去年の秋から作り続けてきたおはなしづくりソフトが、ようやくお披露目です。
■ 開催日時: 2008年9月17日(水)〜9月23日(火・祝)
9:00〜21:00 (※最終日は16:00閉場)
ワークショップは 9月21日(日)
11:00〜13:00、14:00〜16:00 各回親子4組 当日先着順
■ 開催場所: 丸善丸の内本店 4Fギャラリー
■ URL:   http://www.maruzen.co.jp/Blog/Blog/maruzen02/P/3532.aspx

これまでも、ピッケのペパドル(紙の工作)で、ごっこ遊びをしたり、おはな
し作りをして、遊んでもらってきました。
そのおはなしづくりを、絵本にするところまで進化させたのが、このソフト。
画面上の簡単な操作でおはなしづくり。プリントして、切って折ってホチキス
で留めれば、世界でたった1冊の小さな絵本のできあがり!
子どもはもちろん、大人も楽しめるソフトです。各回4組の親子にご参加いた
だけます。見学のみもできますので、お気軽にお越しください。

http://picke.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post-9a02.html