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「ひとり出版社」のお祭りがあった

この夏、大学の研修授業で首都圏を訪問した。その合間に、表参道の小さな書店・山陽堂書店で開催されていた「本の産直・夏まつり」に出かけた。

このイベントについては、マガジン航のこちらの記事にまとまっている。

小出版社の「産直」フェアに行ってきた(仲俣暁生)

ここに参加していたのは、小さな出版社ばかり。

アダチプレス、アトリエM5、アリエスブックス、アルテスパブリッシング、えにし書房、共和国、苦楽堂、ころから、サウダージ・ブックス、猿江商會、サンライズ出版、三輪舎、スタイルノート、トランスビュー、ななみ書房、羽鳥書店、バナナブックス、ビーナイス、ブックエンド、ぶなのもり、ぷねうま舎、ブルーシープ、ポット出版、堀之内出版、まむかいブックスギャラリー、港の人、わかば社

もともと世の中に数多くある出版社のほとんどは小規模な組織だが、ここに揃っていたのは超がつくほどの零細出版社。一人で全てをこなしている「ひとり出版社」も少なくなかった。ひとりとはいえ、発売している書物はしっかりと印刷製本され書店に流通している。

ちょうど訪れたとき、業界紙などの取材が入っていて、売り手の人たちが、「大手出版社とはまったく違う働き方だよ」と談笑している。その言葉に悲壮感はなく、むしろやりたいことやっている明るさがあった。これも耳に入ってきたが、小規模出版社は、新刊書店だけでなく古書店でも流通販売しているそうだ。ちなみに古書店は一人で開業している「ひとり古書店」がずっと多い。

小規模出版社はそれぞれ個性豊かな出版物を送り出している。そうした出版物をまとめて目にすることは意外と難しい。この夏まつりは、取次や書店という中間を抜いたまさに本の「産直」市であり、本の送り手の顔が見えコミュニケーションがとれる場だった。一般の読者にとっては新鮮なイベントで、たしかに上の記事にあるとおり縁日的な楽しさがあった。

その後立ち寄った有楽町三省堂では、雑誌売場に有楽町ガード下のグルメ本があった。一冊わずか200円。コピー用紙をホチキスで綴じたバーコードのない「手づくり本」が、一般書店の店頭で販売されていることに驚いた。これは、セルフ・パブリッシング(自己出版)やジンの世界と限りなく近い、一般の書店流通からもはみ出した「ひとり出版社」だ。

本の夏まつりに、書店に並べられた手づくり本。どれも出版産業全体から見れば取るに足らない小さな営みにすぎない。とはいえそこには、ちょうど研修で見学したばかりの大企業で見られた分業体制では味わえない魅力がある。パーソナルファブリケーションやMakersといったDIY文化的なムーブメントが、とりわけ都市部で盛り上がっているのは、じつは大組織に所属している勤め人たちの「ひとりでものをつくる」という欲求が反映されているのかもしれない。

ロンドンのハックスペースに行ってきた

もうずいぶん前の話になりますが、2014年11月にロンドン・ハックスペースを訪問しました。ロンドンに訪問する前にハックスペースのメーリングリストで訪問のお願いをしたところ、メンバーのTomさんが快く応じてくれて詳しく案内していただけました。

「ハックスペース」 というと、サイバー犯罪拠点だと勘違いされる方もいらっしゃるかもしれません。ハックスペースとは、おもにコンピュータ技術に関わる人びとが自主的に運営しているコミュニティスペースのことで、悪事をはたらいているわけではありません。Wikipediaにも説明があります。

ハッカースペース (Wikipedia)

ロンドン・ハックスペースは、2009年に活動をはじめ、2013年に現在のハックニー・ロードに移転しました。現在では、なんと1000名を超えるメンバーが登録しています。メンバーは月会費を支払い24時間使えるスペースを維持しています。プログラマーやデザイナーなど多様な人たちが、見た感じあやしい(笑)活動を夜な夜なおこなっています。

London Hackspace
https://london.hackspace.org.uk/

1階と地下1階にわたる予想以上の広大なスペースには、PC作業ができるワークスペースのほか、電子工作、木工、金属加工もできる工房がありました。3Dプリンタやアマチュア無線局もありました。

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ハックスペースのエントランス。メンバーはICカードで入館できる手作りシステム。看板やティッカーも手作りでしょうね。

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ハックスペースのオープンエリアはこんな感じ。このほかにもレクチャールームなどがあって、とても広いです。

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ハッカー風味の「オフィスゴリコ」。レーザプリンタにお菓子、冷蔵庫にはレッドブルなどが完備されています。

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編み機でQRコードをニッティング。ちゃんと読み込めるそうです。

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ハッカーの本棚。

裏の駐車場では、中古のトレーラーを改造したメンバー手作りの「宇宙船シミュレータ」を紹介してもらいました。素人が作ったとは思えないほど本格的なのですが、内装は手作りなのでチープな素材感が漂います(笑)

シミュレータは、あるミッションを達成するためのゲーム仕立てになっていて、相当難易度が高いようです。トラブルが起きると、マニュアルにしたがって対処しなければいけません。警告ランプが光って警告音が鳴るだけでなく、しまいには部品が吹っ飛んでくる(!)という、楽しいギミックが満載の宇宙船です。ProcessingやArduinoなどたくさんのシステムを組み合わせて作っているようでした。作者が楽しそうに改造しつづけながら自分で遊んでいる様子が、なによりも面白かったです。

LHS Bikeshed
http://www.lhsbikeshed.com/

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トレーラーの外観(公式サイトの写真)

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宇宙船シミュレータの内部(公式サイトの写真)

ハックスペースの運営で困っていることは、家賃負担だということでした。ロンドンは家賃が高騰していて、都市部に住んでいた人も郊外へ移動を余儀なくされているそうです。現地に住んでいる人たちも家賃高騰の問題に直面しているようで、よくこの話題を耳にしました。

ロンドン・ハックスペースはメンバー専用のスペースですが、火曜日の夜は一般公開されています。興味のある方は訪ねてみてはいかがでしょうか。

ペルーでアプリCabifyを使ってタクシーを呼んでみた

海外に行くと、位置情報によってモバイルアプリの広告内容が変わるんですね。先日ペルーに滞在していたときに、あるiOSアプリを開いていたら、タクシーアプリらしき広告が出ました。Cabify(キャビファイ?)といって、タクシーアプリUber(ウーバー)のライバルアプリのようです。Cabifyのサービスエリアは、スペイン、チリ、ペルー、メキシコの4カ国です。

海外に旅行し、とくに公共交通機関が発達していない地域では、タクシーにお世話になることがよくあります。しかし見知らぬ土地でのタクシー乗車には、安全性と料金の心配がつきまといます。2013年12月、南米エクアドルで新婚旅行中の日本人がタクシー強盗に襲われて死傷した事件がありました。流しのタクシーを拾って被害にあったそうです。

ペルーのタクシーに料金メーターはなく交渉制です。つまり乗る前に運転手に行き先を告げて料金交渉をして納得したら乗車します。道を歩いていると、現地の人々がタクシーと交渉している場面によく出くわしました。この交渉、スペイン語を話せない旅行者には厳しいです。またタクシードライバーは、旅行者とみると相場より高い料金をふっかけてくるようですから交渉は難航します。

タクシーの数は多いのですが、どの車が安全なのかわかりません。正規のタクシーのほかに、白タクも走っています。タクシーの行灯をダッシュボードに置いているだけの車は怪しい気がしました。旅行者は、基本的に流しのタクシーは利用せず、ホテルで呼んでもらうかタクシー会社に電話して呼ぶことがすすめられています。料金は流しのタクシーよりも高くなりますが、差額をケチって命を危険にさらすよりはよいとおもいます。それほど治安が悪い感じはしませんでしたが、結局流しのタクシーには乗りませんでした。

CABIFY. Tu chofer privado. from Cabify on Vimeo.

さて、リマでCabifyを使ってタクシー乗車してみました。リマではUberもサービスインしていましたが、双方の料金に大きな違いはなく、Cabifyのほうが車両が多そうだったので、Cabifyを選択。二つのアプリで割引になるプロモーションコードを探してみましたが、すでにキャンペーン期間が終了していたようです。ちなみにリマの大きな公園(ミラフローレスのケネディ公園や噴水公園)には無料Wi-Fiが整備されていましたので、国際ローミングを利用せず屋外からアプリを使ってタクシーを呼ぶこともできます。

Cabifyでアカウント登録し、支払い情報としてクレジットカードかPayPalアカウントを登録します。料金はカードかPayPalに請求されるので、利用時に車内で現金精算する必要はありません。車種は、ライト、エグゼクティブ、グループ(バン)の3種類。ライトとエグゼクティブは4人、グループは6人まで乗れます。ライトといっても革張りのシートで日本の小型タクシーよりも快適でした。2度乗車しましたが、いずれも実際の料金はアプリの見積料金よりも安くなりました。

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これはライトカー。トヨタ車でした。

料金をメモしておきます。

ミラフローレス地区からラファエル・ラルコ・エレラ博物館まで、ライトカーで、S/.24.80(ソーレス)、6.40 €(ユーロ)。
ミラフローレス地区からリマ国際空港まで、エグセクティブカーで、S/.54.70(ソーレス)、14.06 €(ユーロ)。
請求者名は、「Maxi Mobility Spain S.L.」でした。

行きは、リマ国際空港からミラフローレス地区までグリーンタクシーで、25USD(ドル)またはS/.80.00(ソーレス)でしたので、Cabifyのおかげでずいぶん安く乗れたことになります。

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エグゼクティブカーに乗ると、ドライバーさんから冷たいミネラルウォーターのサービスが。国際線には持ち込めないので空港の保安検査前までに飲みました。

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白黒反転のQRコードってあるんですね。

東京では安全で安いタクシーがたくさん流れているので、Uberのようなタクシーアプリは特別な機会しか利用することはなさそうですが、海外では重宝しそうです。

2014年2月22日「おもてなしのデザイン」開催のお知らせ

研究室のプロジェクトDEVELOPMENTALで、トークイベントを企画しました。
今回のテーマは「おもてなし」です。
東京オリンピック招致プレゼンで流行したことばですが、オリンピックの話ではないですよ。
(でも、オリンピックの話もリクエストすれば出てきそうですが。笑)
宮田雅子さんは、はばひろい関心をもちながらデザイン活動されています。宮田さんのお話をまとめて聴ける機会になるので楽しみにしています。
みなさんのご参加をお待ちしています。

DEVELOPMENTAL/オープントークvol.2「おもてなしのデザイン」

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プレゼンター: 宮田雅子(デザイナー/札幌大谷大学)

司会・進行: 杉本達應(札幌市立大学)

日時: 2014年2月22日(土) 16:00-18:00

会場: 札幌市立大学サテライトキャンパス
[札幌駅南西・北4西5・アスティ45ビル12階 電話 011-218-7500]

参加費無料。事前申込不要。どなたでもご参加いただけます。
Facebookご利用の方は、ぜひイベントページで参加登録してください。

デザイン思考、ソーシャル・デザイン、コミュニティ・デザイン、サービス・デザイン……近年、「デザイン」という言葉が、商業デザインを超えて多様な領域で使われるようになりました。

今回、札幌を拠点にユニークなデザイン実践を展開されている宮田雅子さんをお迎えし、 広がる「デザイン」の意味をラディカルに問いなおします。キーワードは、「おもてなし」。

宮田さんは、たんなる地域振興や観光開発ではないデザインとして「美唄式 あぜ道ピクニック–これが美唄のおもてなし」(北海道美唄市)等をプロデュースしています。こうした活動事例を通して、「おもてなしのデザイン」とは何か、「おもてなし」と「サービス」の違いなどについて話題を提供していただき、参加者のみなさんと話しあう機会にしたいとおもいます。

宮田雅子(みやた・まさこ)
札幌大谷大学芸術学部美術学科専任講師。
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業。凸版印刷株式会社でセールスプロモーション企画に従事後、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。東京芸術大学美術学部先端芸術表現科助教を経て、現職。
専門はメディア・デザイン。デザインとメディア論の間を往復しつつ、プロジェクトやメディア実践などを手がける。共著に、『メディアリテラシー・ワークショップ:情報社会を学ぶ・遊ぶ・表現する』(東京大学出版会)など。

主催・お問い合わせ先:
札幌市立大学デザイン学部メディアデザインコース 杉本達應研究室
sugi (at) media.scu.ac.jp
*「DEVELOPMENTAL」は杉本達應研究室の研究プロジェクトです。

2014年のはじまり

もうお正月気分もすぎましたね…。年賀状つくれませんでした。

はじめて札幌の冬を過ごしています。
このところ毎日、氷点下の気温や真冬日が続いています。
ところが、わたしは長時間屋外にいることがほとんどないため、外の寒さが身にしみていません。
雪は積もっていますが、賃貸マンション暮らしのため雪かきをせずにすんでいます。
部屋の中は強力なストーブ暖房のおかげで、これまで過ごしたどの冬よりも暖かいほどです。

これでは、まるで自分があたたかい水槽で泳いでいる熱帯魚のようではないですか。
厳しい自然と対峙せずにすんでいる住環境に感謝しつつも、エネルギーを使いまくっていることに、いくばくかの後ろめたさを感じる冬の生活です。

さて今年もまた新たなことへ取り組むことが増えそうです。
夏には札幌では、札幌国際芸術祭が開催されます。
自然と季節の変化が楽しめる北海道にぜひ遊びにいらしてください。