キャラクタービジネスとしてのNHK

NHK教育フェアに出かけました。お目当ては、「そうぞうライブラリー」展示ブースです。前日にNHKの方からメールでご案内いただきました。情報に感謝です。NHKも、ようやくBBC Creative Archiveのような二次創作可能なライセンスで映像を提供するようなので、これは見ておこうと思いました。しかもこども向けということは、コンテンツにも工夫があるだろうと期待していました。

NHK教育フェア
http://www.nhk.or.jp/edu-fair/

Creative Archive
http://creativearchive.bbc.co.uk/

「そうぞうライブラリー」は、ソフトウェア「そうぞうエディター」を使って、あらかじめ用意された映像素材を編集して短い作品をつくることができるものでした。「そうぞうエディター」は、さいきん話題のWindows用映像編集ソフトウェアLoiLoScopeがベースになっているとのこと。
http://loilo.tv/vpo/pressJP.html

映像素材は、自然の風景を中心にとてもきれいです。さらに、動く「どーもくん」や「おしりかじりむし」といったキャラクターを合成できます。編集のイン点・アウト点で、自動的に短時間のフェードイン・フェードアウトがかかっていて、きれいに仕上げてくれます。

しかし残念ながら、これは、こどもの創造を広げるコンテンツではありませんでした。キャラクター、背景、文字、音声というレイヤーが決められています。これを開発した大人たちは、こどもがつくる作品の枠を想定しすぎではないでしょうか。もちろん、こどもたちは、枠を超えた想定外ものをつくりのけるでしょうが、彼らにとってもちょっときゅうくつな箱庭だと思います。「キャラ」というレイヤーの存在が象徴的です。背景とキャラを合成するのは映像の楽しみのひとつだとは思いますが、それだけでは映像制作の魅力を矮小化していると思いました。

とはいえ、来年秋に公開予定で準備が進んでいるそうですので、今後に期待したいところです。

さて、となりのNHKスタジオパークも無料公開されていたので、入ってみました。

NHKスタジオパーク
http://www.nhk.or.jp/studiopark/

デジタル放送の宣伝や、番組の宣伝や、制作体験や、とにかく賑やかな展示が盛りだくさんです。教育フェアもそうでしたが、随所に説明役のお姉さんがいて、黄色い声を張り上げています。説明役にNHKのOBの方を起用してくれたほうが、だんぜん面白そうです。全体的に、とても20世紀博覧会的な展示で、タイムスリップしたようでした。自宅でテレビをやめたせいもあるのですが、まるで古いメディアとして「テレビ」の博物館を見ているような錯覚に陥りました。「そういえば、テレビってこういう華々しいメディアだったなあ…」としみじみ過去を振り返る感じです。来場者のほとんどが、小学生の団体と高齢者だったのが、いまのテレビの視聴者層を反映しているようでした。

実際の収録スタジオが、窓越しにのぞき見られるようになっているのは面白かったです。来場者がフラッシュ撮影すると、収録に支障が出るからカーテンが閉められるそうですが、すでにほとんどカーテンが閉まっていました。それでもカーテンのすき間から、大河ドラマのスタジオセット、新・日曜美術館の収録風景、ある特別番組の準備風景をのぞき見ることができました。

スタジオパークのおみやげ屋さんには、多くのキャラクターグッズが並んでいました。NHK前の広場のステージでは、キャラクターと一緒に多くのこどもたちが踊っていました。このような風景を見ると、NHKは、まるでキャラクター産業の一企業だと思わざるをえません。キャラクターを売ることは、テレビの愛好者を増やすことには寄与するでしょうが、こどもの創造性をひろげることにつながるかは疑問です。