ブラック・インターンを容認してよいか

学生と面談。就活の話をきいたら、思い切りブラックなインターンだった。完全なる無償労働で採用の約束もない。

一般論だが、あるカリスマのもとで働くには、滅私奉公で下積みがもとめられることもあるだろう。芸人の付き人のように、昭和の時代にはよくある光景だった。しかし芸人の付き人と、いまのインターンとは、ぱっと見は似ているが、大きな違いがある。

昔の人は、雇った人間をさいごまで面倒をみていた。文字通り終身雇用していたという意味ではない。あるじが雇えなくなった場合、ほかの働き口をみつけたり紹介して、食いっぱぐれないようにしてあげていたはずだ。ふるい言葉でいえば、仁義を通していた。一方、いまの企業や経営者は、一介のインターン生にそんな情をかけることはしない。

伝統的な徒弟制は、不安定な弟子の身分をどこかで回収してあげていたのだ。それにひきかえ、現代の悪質なインターンは、若い人の労働量を搾取し使い捨てている。まったく割に合わない。

なにもこの時代に、そんなブラックな組織にはいって、わざわざ苦しい経験を積もうとしなくてもよいのではないかとおもわず口走った。もちろんインターン先にすっかり心酔していて、人生なげうってもかまわない覚悟があるのなら、止めることはできない。でもさ、そのキラキラしたカリスマに傾倒しているのは一時の熱病かもしれないよ。あとで振りかえったら、もっとよい選択肢があったかもしれないよ。

リスクよりも安定をというつまらない説教かもしれないが、やっぱりブラック・インターンは一線を超えていて許容できない。

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カフェ風選挙事務所

投票日の夜は、空港から車で帰宅していた。帰りの飛行機のなかのスクリーンでも、カーラジオでも、統一地方選の開票速報を伝えている。帰り道の通りに、選挙事務所が二つあって、明かりがまぶしく輝いていた。一つは女性候補者の事務所で、カフェのようなおしゃれな内装のように見えた。

NHKラジオは、出口調査によると何々党支持者の何割がこの候補に投票した、といったを何度も伝えている。それだけ聴いていても、争点があったのかどうなのかよくわからない。要は結果としての党派の趨勢が伝えたいのだろう。地方議会選挙の開票速報をそんなに時間をかけて報じるのなら、選挙期間中もちゃんと報じてほしかったよ。

地元の県議の最多得票の候補者は、帰り道に遭遇したカフェ風の選挙事務所の主だった。何者か検索したら、元アナウンサーだという。ほかの人も同じことが気になっていたのか、彼女の出馬のニュースが新聞社サイトのアクセスランキングに入っている。最低得票の候補者は、ご本人には残念だが予想していた通りだった。選挙は知名度と組織力でしか決まらないのかとおもうとやるせない。最下位から二番目(落選)の候補者は、海外大学のExtensionとCommunity collegeというちょっとふしぎな学歴を書いていた現職の候補者だった。

開票速報も新元号も1分1秒を争うものかな。時がくれば結果がわかることを速報することに大きな価値はない。そこに莫大なコストをかけつづけるのは生産的とはおもえないのだけど。

明日から前期開講だが疲れていて準備に手がつかない。なかなか寝つけないでいると、夜空を照らす光の瞬きとともに大きな雷が落ち、雨が降ってきた。

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選挙と指定席券売機と勉強会

朝ごはんがなくて喫茶店にモーニングへ。そのあと病院を経由し、佐賀県議員選挙の期日前投票に。

投票所の出口にNHKの出口調査に2人待ちかまえていた。出口といっても市庁舎内だよ。前もいたけれど、市は入れないでほしい。タブレット端末をかかえた女性が「タッチするだけですみますので!」と声をかけてきたけれど、お断りした。出口調査に協力する気にはなれない。投票の秘密は守られるべきだし、開票を骨抜きにする行為に協力するなんてナンセンスだからだ。出口調査にかぎらず、投票先は基本的にだれにも言わない。

地方議会選挙の投票はいつも悩む。地縁がなく、候補者の情報をほとんどもちあわせていないからだ。投票先を選ぶ基準は、候補者の属性がマイノリティであること。与党より野党、高齢者より若年層、男性より女性。それだけで議員の多様性が増すことを信じる。もちろん政策も選挙公報でチェックする。ただ選挙公報では、現職か新人かもよくわからないのでなんとかしてほしい。ポスターはみないし、候補者のウェブサイトをわざわざみることもほとんどしない。もちろん名前を連呼しかしない選挙カーには耳をふさぐ。現職候補は議会議事録の検索システムとつきあわせて提示するようなものがあるとよいのだけれど。

午後は博多のfukuoka.R #13へ向かう。佐賀駅にいくと、指定席券売機が1台から2台に増設されていた。じつは1月22日にJR九州に要望をメールしていて、29日に返信をもらっていた。

ご指摘を頂戴いたしました佐賀駅につきまして、
改めてご利用状況を確認した結果、具体的な設置時期は
現在調整中となりますが、指定席券売機の増設が
望ましいとの結論に至りました。

まったく期待していなかったけれど、ずいぶんはやく実現していた。わたしの要望が効いたのかわからないが、改善されたのはありがたい。ただネット予約にシフトさせようとしているんだから、このくらい率先してやってほしかった。

fukuoka.R #13は、初心者セッション(といってもすごいスピードで初心者はついていけない・笑)、機械学習、Rパッケージの開発、Spotify API、スクレイピングとLeafletでの可視化と、勉強になった。こうした勉強会コミュニティを継続されている運営者のみなさんには頭がさがる。永遠の初心者でコミュニティにフリーライドしているのが申し訳ない。

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記者とデザイナー

きょうは、新聞記者さんとグラフィックデザイナーさんにお会いしてお話した。

記者さん曰く、文化面担当になると、記事に事実だけでなく感覚でとらえたことを書かなければならないので戸惑ったそうだ。署名記事として掲載されるので、ずいぶん気をもんでいらっしゃった。たしかに文化関連記事は事実だけではそっけない。一方、記者の解釈が過ぎると興ざめしそうだ。ほんとうは分厚い批評をふくむ記事があってもよいはずだが、日本の新聞紙面の文字数では難しいだろう。

デザイナーさんは、毎年インターンを受け入れていらっしゃる。かれが職場の掃除をしているときに、インターンへの評価が下されるそうだ。なぜなら、「何か手伝いましょうか」と言ってくる学生さんと、ぼーっと見ているだけの学生さんがいるから。どちらがたかく評価されるかは言わずもがな。デザイン能力うんぬん以前の問題だ。周辺状況を把握し、それに応じた気づかいができるか、というごく基本的な能力がみられている。

このデザイナーさん,毎日、30分とか45分とか時間を決めて習作をつくっている。Zack Liebermanも毎日欠かさずコーディングしている。小さな作品を作りつづけるのは、大きな仕事をやる前の準備運動をしておくようなものだ。創作の基礎体力が鍛えられるのは間違いない。わたしも毎日、コーディングとライティングはかかさずやろうとあらためて決意した。

締切がないと書けないといったのは記者さん、時間を決めて創作するといったのはデザイナーさん。デッドラインはクリエイションのみなもとだ。

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裁量労働制

新入生オリエンテーションがあり、いよいよ年度がはじまった感じがでてきた。しかし授業準備のほかに、教育研究以外にやらなければいけないことが山積していてなかなかに困っている。あるプロジェクトでは、半年先のことの仕込みなどを粛々とこなす。こんな計画的な遂行は、本当は自分自身のプロジェクトで行いたいところだ。

4月から職場が裁量労働制になり、人事課による説明会があった。これまでは月単位の変形労働制で、月単位の労働時間をきっちりそろえる必要があった。超過勤務はいっさい許されない。週末出張などある不規則な仕事なので、月々の労働時間を揃えることなど土台不可能である。どこかで嘘をついて帳尻を合わせなければならない。この実態を示さない申告作業が不誠実でつらかった。裁量労働制になることで、ひとつペインが減ることになる。

裁量労働制でも出勤簿と出退勤時間の記録は残る。人事課は超過勤務の状況をみはるためだというが、裁量労働制の労働者は、職場だけで仕事をしているわけではない。職場の外での「不可視の残業」がかなりあるのに、それは申告の対象ではないらしい。職場の滞在時間が少なかったとして、その労働者が過労でないといえるだろうか。

今回の説明会のやりとりでは、「そこは説明が苦しいが……」などと濁す場面があった。労使ともこうした事情を抱えていることは織り込み済みで、なんとか表面を繕っているだけだ。人件費の抑制と「働き方改革」という国のスローガンのなか、対応しているポーズはとらなければいけないのかな。

裁量労働制って、勤務状況ではなく成果や業績を評価し、労働者のワークライフバランスは本人の裁量にゆだねるということではないのか。本当にゆとりある働き方にかえたいのなら、深夜帯のメールサーバを停止するとか、勤務間インターバル制度を導入するとかすればいいのに。まず隗より始めよで、中央省庁こそ率先して休んでほしい。

説明会の最中、そんなことをぼんやり考えた。自身に関わる大きなことなのに、熱を帯びた質疑の応酬をなかば他人事のように眺めながら。

裁量労働制はなぜ危険か――「働き方改革」の闇 (岩波ブックレット)

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