デザインということばは、誤解にあふれている。
よくある誤解は、デザインを装飾だと考えること。きれいな飾り付けをほどこすことがデザインだと信じている。この立場からは、色や形など余計な要素を足すのがデザイナーの仕事だといえる。
つぎにある誤解は、デザインをテイストだと考えること。テイストとは味わい、趣味、趣向のことだ。かっこいいセンスと言いかえることができるかもしれない。素敵なデザイン、かわいいデザイン、クールなデザインといった形容は、だいたいテイストのことをいっている。
デザインをテイストだと考えると、趣味の世界に入ってしまう。特定の時代の潮流や、あるデザイナーの作風が好き、というように。デザインをテイストで語ると、主観的な好き嫌いの影響を受け、語り手の狭い了見で評価をくだすことになる。
デザインとは、そんな小さな範囲の問題ではないのだ。本来、テイスト云々よりも基底にある、よりロジックな設計や思想を指す。
しかしデザインという語は、テイストと同義でつかうほうが世に受けるためか、この誤解はまだまだとけそうにない。
(466文字・10分)
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