新入生オリエンテーションがあり、いよいよ年度がはじまった感じがでてきた。しかし授業準備のほかに、教育研究以外にやらなければいけないことが山積していてなかなかに困っている。あるプロジェクトでは、半年先のことの仕込みなどを粛々とこなす。こんな計画的な遂行は、本当は自分自身のプロジェクトで行いたいところだ。
4月から職場が裁量労働制になり、人事課による説明会があった。これまでは月単位の変形労働制で、月単位の労働時間をきっちりそろえる必要があった。超過勤務はいっさい許されない。週末出張などある不規則な仕事なので、月々の労働時間を揃えることなど土台不可能である。どこかで嘘をついて帳尻を合わせなければならない。この実態を示さない申告作業が不誠実でつらかった。裁量労働制になることで、ひとつペインが減ることになる。
裁量労働制でも出勤簿と出退勤時間の記録は残る。人事課は超過勤務の状況をみはるためだというが、裁量労働制の労働者は、職場だけで仕事をしているわけではない。職場の外での「不可視の残業」がかなりあるのに、それは申告の対象ではないらしい。職場の滞在時間が少なかったとして、その労働者が過労でないといえるだろうか。
今回の説明会のやりとりでは、「そこは説明が苦しいが……」などと濁す場面があった。労使ともこうした事情を抱えていることは織り込み済みで、なんとか表面を繕っているだけだ。人件費の抑制と「働き方改革」という国のスローガンのなか、対応しているポーズはとらなければいけないのかな。
裁量労働制って、勤務状況ではなく成果や業績を評価し、労働者のワークライフバランスは本人の裁量にゆだねるということではないのか。本当にゆとりある働き方にかえたいのなら、深夜帯のメールサーバを停止するとか、勤務間インターバル制度を導入するとかすればいいのに。まず隗より始めよで、中央省庁こそ率先して休んでほしい。
説明会の最中、そんなことをぼんやり考えた。自身に関わる大きなことなのに、熱を帯びた質疑の応酬をなかば他人事のように眺めながら。
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