西海岸でZineを買う。 The Needles & Pens story


WWDC 2013の合間をぬって、サンフランシスコのミッション地区(Mission District)にあるNeedles and Pensという小さなお店を訪ねました。Needles and Pensは、手作りの「ジン(Zine)」や服、アクセサリーを販売したり、展覧会を開催しているアートスペースです。

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ジンはミニコミや同人誌と同じ自費出版の小さなメディア。米国西海岸が発祥の地といわれていて、カウンターカルチャーやDIY精神にもルーツをもとめることができるかもしれません。デジタル時代に、しかもコンピュータ・テクノロジーの集積地である西海岸で、ジンというアナログ出版の文化が存続していることは興味深いですね。

店内には、たくさんのジンの作り手(Zinesters)が持ち込んだジンが並んでいました。ジンの内容は、詩や小説、批評、イラスト集など何でもあり。形態もコピーした紙をホチキス綴めしたものや、手作りの袋に入れたもの、しっかり製本したものまで多種多様です。どれも少部数限定出版ですから、ひとつひとつ手描きでナンバリングされた冊子も少なくありません。

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おだやかな店主におすすめのジンを訊ねたところ、彼女は棚のすみからすみまで多くのジンを紹介してくれました。これらのジンは見た目ほど安くなかったので、とてもすべてを買えそうにありません。そこで、凝った装丁のものや日本語が載っていたジンをいくつかチョイスし、Squareレジで決済しました。

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Needles and Pensは、2003年に生まれて今年で10年になるそうです。
このとき購入した『The First 10 Years of Needles & Pens』から序文を紹介します。

Needles & Pensの物語は、2002年サンフランシスコのドットコム不況の廃墟の中からはじまりました。沈んだ経済が賃貸市場に一瞬のチャンスをもたらし、私たちはすぐに場所を見つけることができました。その年の10月に、Breezy Culbertsonと私は、14番街485番地の鍵を手に入れました。ヘンなアーティストたちが夢見る、家主からスペースを借りることをやったのです。

大家さんは、私たちがこのスペースで何をやろうとしているかよりも家賃の支払いについて気にしながら、私たちに裏に住みながら店先ではやりたいことを何でもやっていいと全て許可してくれました。私たちは後に、この地が多くのボヘミアンやアーティストたちの豊かな歴史をもっていることを知りました。 1980年代、パンクロッカーがここに住み、1990年代、オノ・ヨーコとマーク・ゴンザレスの作品を展示するKiki Galleryがここにあり、そして私たちが借りる直前、この店先はレズビアンが所有し運営していたタトゥーショップだったのです。私たちがあずかり知らぬうちに、宇宙はこのオルタナティブな遺産を次に継承するものとしてNeedles & Pensを選びとり、私たちはそれを受け継いだのです。

Breezyと私は、私たちの関心事をすべて盛りこんだ店を開こうとおもいました。それは、ジン、手作りの服、アートギャラリーです。当時のサンフランシスコにはそうした場所がまったくなかったので、型破りなアイデアでした。 8ヵ月後の2003年6月、Needles and Pensは、アーティスティックな場所がほとんどない街の中にその扉を開きました。ミッション地区で草の根のアートシーンを提供する場所は、Adobe Books、Pond Gallery、Misson Records、Oh So Little Cafeしかなかったのです。私たちはほどなく、高すぎる家賃のためいなくなったり、より経済的に住みよい街に移転を余儀なくされたりしたクリエイティブな人たちが、自分の作品を紹介する場所に飢えていることに気がつきました。私たちはこの状況に応える術を思いつきませんでしたが、あっという間に14番街の静かな店頭が、ジンや手作り服を持ちこむ人たちが顔を出すクリエイティブなエネルギーに満ちたにぎやかな場所へと変化しました。この場所は、アートショー、朗読やパフォーマンスのために立ち寄るツーリングバンドやジン作家たちであふれました。人びとはいつでもすすんで作業し、アートショーを企画し、みなが参加しようとしました。このスペースに興奮があふれていたのは明らかでした。健康で活気に満ちたシーンを生みだす要素をもっていたのです。

10年後、現在16番街に位置するN&Pは、何百人もの新進アーティストと著名アーティストの作品を展示し、85回の展覧会を企画し、6冊の本を出版し、数えきれないほどの朗読、パフォーマンス、音楽イベントを開催しました。この大切な記念日にむけて、私たちはしばしクリエイティビティの時代を振り返ります。アーティスト、ミュージシャン、キュレーターによるエピソードや写真を通して、この本はアートスペースとそれを育てサポートするために周りに集まった人たちのグループを記録しています。この時代は、こうしたあたたかいクリエイティブなエネルギーとNeedles and Pensが運営するコミュニティからの関与とともにあり、これからも続くでしょう。

Needles and Pensのすばらしい最初の10年をつくってくれてありがとう。

Andrew Martin Scott & Breezy Culbertson
Needles & Pens 創立者
2013年5月

「西海岸でZineを買う。 The Needles & Pens story」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: SUGIMOTO Tatsuo - 2013年

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