ティモシー・スナイダー,松井貴子訳,梶さやか解説,2021,『秘密の戦争:共産主義と東欧の20世紀』慶應義塾大学出版会.[ISBN: 9784766427707]


ロシアのウクライナ侵攻からしばらくして、YouTubeにティモシー・スナイダーのイェール大学の講義が出てきた。ざんねんながら講義の内容はあまり把握できていない。けれど、ウクライナに詳しい専門家がいるんだという驚きと、アメリカの大学の講義の雰囲気を疑似体験できることから、たまに流していた。

スナイダーは、何か国語もあやつれるという。そのスナイダーの本が、『秘密の戦争』だ。本文が約400ページ、註・参考文献が約100ページある分厚い研究書だ。歴史にうといので、私にはこの本は難解すぎた。ポーランドの「プロメテウス運動」など知らないことばかりだ。なので、内容について深入りすることはできない。ヨーロッパの歴史はもちろん、アジアの歴史も日本の歴史もほとんど知らないことを改めて気づかせてくれた。

本書は、20世紀初頭、ポーランドの地方の知事だったヘンリク・ユゼフスキの生涯を軸に、中央・東欧の現代史を描く。ポーランドとその周辺は帝国に囲まれた地域で、数多くの領土紛争がおきている。ユゼフスキは政治家であり、芸術家であり、諜報活動家でもある。

ユゼフスキは、晩年作品制作を再開する。彼の描いた絵が掲載されているのが興味深い。もっとディテールも見てみたかったが、かるくネット検索しただけでは見つからなかった。

それにしても、このような歴史研究書が、日本語で読めることがすごい。おびただしい数の人名や地名が、すべてカタカナになっているだけでも圧倒的で、翻訳の大変さがしのばれる。本書の翻訳にふれたツイートがあったので紹介する。

原題(Sketches from a Secret War)もそうだが、最後の2文がウィットにとんでいる。

ユゼフスキは揺るぎない人生(スティル・ライフ)を生きた。彼が描いた構図のくばくかは、いまも失われていない。

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